本参考資料は2022年3月1日(現地時間)にスペイン・バルセロナで発表された講演の翻訳版です。
郭平輪番会長 MWCバルセロナ基調講演
皆さん、おはようございます。MWCバルセロナで再び講演できることをとてもうれしく思います。
『ドント・ルック・アップ』という最近の映画に、世界が大災害に直面しているのに、見て見ぬふりをする人々が出てきます。私は、これは私たちの未来だとは思っていません。私たちというのは、ファーウェイと業界全体のことを指しています。しかし、未来を見るためには、政治や派閥、プロパガンダに惑わされることなく、顔を上げなければなりません。顔をあげて前を見て、進むべき道を見つける必要があります。
ファーウェイに関心を持つ人は、聞くかもしれません。「ファーウェイは最近どうなっているのか。中長期的な競争力はあるのか。まだお客様の成功に貢献できるのか。」 私は「まず顔をあげましょう」と答えたいと思います。
デジタル化とカーボンニュートラルは、現在世界の二大重要課題であり、ICT産業の未来に大きく影響を与えます。これから、私は2つの方向からファーウェイの見解をお話ししたいと思います。
世界のデジタル経済は急速に発展しており、2022年には世界のGDPの50%以上がデジタル化されると言われています。デジタル化の需要は、予想を大きく上回るものとなっています。しかし供給側から見ると、シャノンの定理やフォン・ノイマンのアーキテクチャはすでに厳しいボトルネックに直面しています。よって私たちはデジタルの持続可能な発展を実現するために、新しい理論やアーキテクチャを模索しなければなりません。
ICT業界は、カーボンニュートラルについても課題を抱えています。あるプロジェクトを評価したところ、世界の環境データを詳細にモニタリングするだけで、現在の排出量の12.5%に相当する二酸化炭素を生み出す可能性があることがわかりました。デジタル化が進めば二酸化炭素排出量は増加します。しかしICTは他の産業のフットプリント削減を支援し、その削減量はICT産業自体が生み出すフットプリントの10倍以上になります。
デジタル経済の強さは、接続密度×コンピューティングパワーにほぼ等しくなりますが、今は強さだけでなく長期的な活力も必要です。そこで、新たな側面である二酸化炭素削減の強度を考える必要があるのです。
この目標のために、ファーウェイは基盤技術への戦略的投資を大幅に増やし、パートナーと協力して技術的なパラダイムの再構築に取り組んでいます。
現在、私たちは基礎理論、アーキテクチャ、ソフトウェアの3つの分野を再構築しています。3分野の再構築は、ICT産業の長期的かつ持続的な発展の支えになります。
まず理論の再構築ですが、通信路容量の拡大を例に挙げましょう。
私たちは通信路容量が上限に近づいていることを知っています。そこでファーウェイは、次世代MIMOやワイヤレスAIなど、シャノン限界にさらに迫るための理論や技術を研究しています。同時に、シャノン限界を超えて通信業界における新たな発展の空間を切り開くために、セマンティック通信のような新しい理論も研究しています。
次に、アーキテクチャの再構築です。
無線通信は高周波、超広帯域、超高速などの重大な技術問題に依然として直面しており、ファーウェイはアーキテクチャーの再構築に向けた新しい技術の探求を積極的に行っています。例えば、フォトニック技術とエレクトロニクス技術の融合により重大問題を解決し、さらに半導体が直面する技術的なボトルネックを解消しようとしています。
コンピューティングアーキテクチャの現在の課題は、AIやビッグデータなどのアプリケーションが猛烈なスピードで発展している一方で、従来のコンピューティングアーキテクチャは依然として「CPU中心」のままであることです。この矛盾を解決するために、ファーウェイではGPUやNPUのポテンシャルを最大限に活用したP2P(ピアツーピア)アーキテクチャを設計し、世界のAI事業の発展をサポートしようとしています。
最後に、私たちはソフトウェアに対するアプローチも見直しています。
AIが爆発的な勢いで成長する未来では、コンピューティング能力に対する需要が急増する一方で、ハードウェア技術の進歩は鈍化します。
これに対し、私たちはソフトウェアのパフォーマンスを倍増させる計画を提案しました。無線セル数やスケジューリングユーザー数などの重要指標をソフトウェアの最適化によって2倍に向上させたのです。
また、HarmonyOSとEulerOSによって、さまざまなハードウェアで潜在的なコンピューティングパワーをより効率的に発揮させるとともに、Mindsporeフレームワークを活用して、研究者やエンジニアの開発効率向上を支援しています。
このAIを中心としたフルスタックソフトウェアの再構築は、新しいエコシステムを構築し、お客様とソフトウェア産業に新しい機会をもたらすでしょう。
2021年のEU産業研究開発投資スコアボードで、ファーウェイは2位となりました。システム・アーキテクチャの最適化とソフトウェア性能倍増のためにさらに投資を拡大しています。ファーウェイは技術課題を克服することで、信頼性の高いサプライチェーンを構築していきたいと考えています。
私たちは、ソフトウェアとハードウェアの相乗効果が十分に発揮されてこそ優れたユーザー体験がもたらされることを知っています。
ICT製品の開発でもこのコンセプトを実践しています。例えば、AHR Turboのアルゴリズムを最適化することで、MetaAAUの消費電力削減と性能向上の両立を実現しましたし、ホログラフィック光学におけるアルゴリズムのブレークスルーによってOXCのワンホップ接続が可能になりました。
このような基盤技術への持続的な投資は、徐々に製品の競争力に反映されていくでしょう。
さて、ここで視点をネットワーク全体に切り替えてみましょう。この十数年、ネットワークの進化は、IPからクラウド、そして今日のAIに至るまで、本質的にはIT技術の最新プラクティスを絶えずCTへと導入するプロセスでした。業界で最も充実したICT機能を備える企業として、私たちは、AIネイティブとなる未来のネットワークの進化プロセスにおいてイニシアチブを取ることができると確信しています。
また、デジタルインフラ機能を向上させるにあたり、二酸化炭素排出量も考慮しています。
私たちのコア・コンセプトは「More Bits,Less Watts」(通信量を増やし、消費電力を減らす)です。理論、材料、アルゴリズムなどのブレークスルーによって、私たちの製品のエネルギー効率を2.7倍向上させる約束を実行しています。
ファーウェイは国際市場から撤退するのかと聞かれることがありますが、私たちの答えは「ノー」です。私たちを選んでくださったお客様がビジネス上の成功を収めることができるよう、ファーウェイは全力で支援します。規格、人材、サプライチェーンなどにおいて、グローバル化戦略を揺らぐことなく進めてまいります。
また、グローバルなイベントにも積極的に参加していきます。私たちは「GUIDE」と呼ばれるビジネス構想を用意しました。未来をリードするために、未来を照らすために、ぜひ私たちの未来への「GUIDE」にご参加ください。ありがとうございました。