大滝地域の医療機会の維持・確保に向けた有効性を評価
秩父市生活交通・物流融合推進協議会では、埼玉県秩父市の山間地域における少子高齢化によるヒトとモノの移動の困難さに着目した、物流・公共交通ネットワーク「秩父モデル」構築への取り組みを、2020年11月より開始しています。
本実証実験では、看護師が患者の自宅に訪問し、診療所の医師が診察を行うDoctor to Patient with Nurseモデル(注2)を実施し、従来の訪問診療との技術面・運用面における課題の抽出や実用化への有用性を評価しました。また、株式会社ゼンリン(本社:福岡県北九州市、代表取締役社長:髙山善司)が開発した「秩父ダッシュボードシステム」により、看護師の患者宅への移動状況をリアルタイムに把握し、医師へ適切なタイミングで通知をすることで、オンライン診療の準備作業の効率化を支援する仕組みを導入しています。
本実証を通じて得られた遠隔医療の有効性を踏まえて、今後、実用化を見据えた検討を進めていきます。
■本実証実験の背景
秩父市は、「豊かなまち、環境文化都市ちちぶ」を目指し、すべての人が安心して住み続けられるまちづくりの推進を基本方針に掲げています。都市部へのアクセスもよく自然に囲まれ、歴史文化あふれる観光地として有名な一方、山間地域が多く住民の高齢化により、災害発生時や日常生活において生活交通・物流等の生活インフラの維持が困難な点が課題となっています。山間地域においては、高齢化が進む一方、地域での医師不足により、今後、医療受診が困難になることが想定されます。こうした課題解決のために、オンライン診療の実証を行いました。
■本実証実験概要
【実証内容】
1. 看護師が患者の自宅に訪問し、電子機器(タブレット端末)を使い、秩父市大滝国民健康保険診療所にいる医師の診察を受診
2. 看護師の位置情報(車両の位置情報)を収集し、診療所の医師に位置情報を提供
遠隔医療の実証イメージ
■各者の役割
■今後の展望
本実証実験の検証により、今後、オンライン診療の技術面・実運用の課題を明らかにしながら、技術課題の整理や運用面での課題を洗い出し、本格運用に向けた計画策定につなげていきます。また、本取り組みでは、患者のみならず、医療従事者の負担を緩和する取り組みにするべく検討を進め、2024年度には社会実装の実現を目指します。
以 上
(注1)2020年11月6日に設立。2021年12月17日現在の構成員は、秩父市、ゼンリン、三菱総合研究所、JP楽天ロジスティクス、西武ホールディングス、西武鉄道、西武観光バス、アズコムデータセキュリティ、オプナス、早稲田大学、東京電力パワーグリット、本庄早稲田国際リサーチパークの12者。本協議会では、物流、生活交通、観光交通、医療等の多様な分野のサービスについて、「ドローン物流」「遠隔医療」「MaaS」(貨客混載・EVカーシェアリング)などの先端技術を活用してヒトとモノの移動を最適化・効率化し、Society5.0社会の実現に向けた事業モデルを構築することを目指しています。
(注2)Doctor to Patient with Nurseの定義:患者の同意の下、オンライン診療時に、患者は看護師等が側にいる状態で診療を受け、医師は診療の補助行為をその場で看護師等に指示することで、薬剤の処方にとどまらない治療行為等が看護師等を介して可能となるもの。
(出典:厚生労働省 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会 第3回 資料4
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000495283.pdf)