基地局の無線部共用化と省エネの両立に貢献
基地局のイメージ
新たな未来社会として提唱されているSociety 5.0の基盤となる無線通信は、5Gが2020年に開始され、2030年以降はBeyond 5G/6Gを加えた新たな通信世代に移行することが見込まれています。このスムーズな移行には通信インフラを担う基地局の新たな整備が必要で、その開発が加速しています。現在、基地局の無線部を構成する増幅器については、特定の周波数帯域での個別開発が進められてきた結果、基地局には、通信世代ごとに異なる無線部が設置されています。そのため、Beyond 5G/6G基地局においては、省スペース化や保守・運用コストの観点から無線部の共用化が期待されており、各通信世代の周波数帯をカバーできる超広帯域化が求められています。
また、Beyond 5G/6Gでは、5Gを上回る通信速度での多数同時接続を実現するため、従来よりも多くのアンテナが密に配置されることから、電波制御には多くの電力が使用されます。そのため、増幅器には消費電力の低減も求められています。当社は今回、これらのニーズに応えるために、増幅器の超広帯域化と低消費電力化を両立し、4GからBeyond 5G/6Gまで対応する基地局用GaN増幅器を開発しました。本開発成果の詳細は、2023年6月開催の国際会議「IEEE IMS(※4) 2023」で発表します。
■開発の特長
1.独自の周波数補償回路で世界初の広周波数帯域を実現、無線部共用化に貢献
・周波数に応じて増幅器の動作モードを切り替えることが可能な独自の周波数補償回路を増幅器に適用し、周波数帯域を当社従来比6倍(※5)の3,400MHzまで拡大
・1台の増幅器で周波数が異なる4G、5G、Beyond 5G/6Gの各通信世代での動作実証に世界で初めて成功
・周波数帯域の拡大により、各通信世代の主要な周波数帯をカバーすることが可能となり、無線部の共用化に貢献
2.高性能GaNデバイスの採用で増幅器の消費電力を低減、基地局の省エネに貢献
・業界トップクラスの電力効率(※6)を有する高性能GaNデバイスを増幅器に採用
・周波数帯域3,400MHzにおいて、Beyond 5G/6Gで求められる水準(※7)を上回る増幅器動作時の最高電力効率62%を達成。さらに従来複数必要であった増幅器を一台にまとめることで、基地局の低消費電力化を実現
■今後の予定・将来展望
Beyond 5G/6Gでの実用化に向けて研究開発を進めます。
※1 無線通信の送信機
※2 2023年6月8日現在、当社調べ
※3 Gallium Nitride:窒化ガリウム
※4 International Microwave Symposium:IEEE国際マイクロ波シンポジウム
※5 当社開発の次世代移動通信システム向け増幅器(2017年1月12日発表)との比較
※6 消費電力に対する出力電力の割合。電力効率が上がると消費電力が低下する
※7 発熱を考慮しても高密度実装可能な電力効率
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三菱電機株式会社 情報技術総合研究所
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