ついては、関西エリアにおける港湾業務で初となるローカル5GのSub6帯(4.8GHz帯~4.9GHz帯)※2(以下、ローカル5G)を活用した港湾業務の効率化・生産性向上に向けた実証実験を大阪・関西万博予定地の夢洲で実施します。
※1 「令和3年度課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に係る実証提案の公募の結果
(関連URL)https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000304.html
※2 2020年12月から免許申請可能となった新たな5Gの周波数帯。障害物があっても回り込む性質があるので、電波が届きやすく広いエリアをカバーできるという特徴があります。
夢洲コンテナターミナルでは、取扱貨物量の増加等に伴い、ゲート前での渋滞問題が顕在化する中、港湾業務のデジタル化による業務効率化・生産性向上とともに、2025年の大阪・関西万博の開催に向けて、工事車両や万博来場車両、物流車両等の円滑な交通を確保するための対応が急務となっています。
また、港湾エリアの環境下では、広大な敷地であるため有線でのネットワーク整備が費用面で困難である点、多くの船、車、人などが出入りするためWi-Fiの電波干渉が頻繁に発生する点、屋外のため電波反射が期待できず、積み上げられたコンテナが遮蔽物となる点など、通信環境整備の課題も抱えていました。
実証コンソーシアムでは、港湾事業の持続的発展、万博開催に向けて抱えている課題、及び通信環境整備に関する課題を解決する実証実験に取り組みます。
2.実証内容
(1)ローカル5Gを活用した港湾業務の効率化・生産性向上と渋滞緩和に向けた実証
空気中の伝搬による減衰が少なく、障害物があっても回り込んで届きやすい帯域であるSub6帯(関西エリアの港湾業務で初利用の帯域)を利用して以下の課題解決実証を実施します。
①コンテナターミナルゲートでのコンテナダメージチェックの遠隔化におけるゲート前待機列の改善に関する実証
コンテナダメージチェックにおいて、ゲート作業員が判断できない場合に有スキル者が管理棟から駆け付けて確認作業を行っているところ、この時間を削減し、ゲート作業を効率化するため、ゲート作業員がスマートグラス(眼鏡型カメラ)を装着することにより、有スキル者によるダメージチェックを遠隔化できるか確認します。また、将来のダメージチェックのAI判定に向けてダメージ画像データを蓄積します。
図 1 コンテナの遠隔ダメージチェック実証のイメージ
②RTG※3等の遠隔操作を見据えたローカル5Gの有用性に関する実証
※3 タイヤ式門型クレーン
RTG運転者の作業環境改善(危険作業の遠隔化)に向けて、ローカル5Gを用いて低遅延かつ高精細な映像伝送等を行うことにより、安定したRTG等の遠隔操作が実現できるか確認します。
図 2 RTGの遠隔操作の有用性確認実証のイメージ
③外来トレーラーの車両情報を活用した周辺道路の渋滞状況改善に関する実証
周辺道路の渋滞解消に向けて、コンテナターミナルに来場する外来トレーラーを2台(周辺道路とコンテナターミナルゲート前に設置)の4Kカメラで常時撮影し、車両情報(ナンバー)を自動で取得することにより、待機時間の可視化及び渋滞予測が将来的に実現できるか確認します。また、コンテナターミナル内での積荷時間の削減に向けて、事前荷繰りに必要な車両情報を「CONPAS※4」へ円滑に伝送できるか確認します。
※4 CONPAS(Container Fast Pass)とは、コンテナ物流の効率化及び生産性の向上を目的に、国土交通省が開発した新・港湾情報システムで、コンテナターミナルのゲート前混雑の解消やコンテナトレーラーのターミナル滞在時間の短縮を図るもの。阪神国際港湾株式会社及び近畿地方整備局が中心となり、阪神港(大阪港及び神戸港)への導入に向けた取り組みを進めている。
図 3 車両情報を活用した渋滞状況改善実証のイメージ
(2)港湾エリアにおけるローカル5Gの有効性の検証
周辺に開放地・郊外地が存在する港湾エリアにおける、水面・コンテナ等を考慮した電波伝搬特性の調査や、電波反射板によるコンテナ裏などの電波の死角に対する通信エリア化ができるか検証します。
3.実証期間
2022年1月18日から3月25日まで
4.実証予定地
夢洲コンテナターミナル及び周辺道路
図 4 夢洲全体像
5.各社の主な役割
西日本電信電話株式会社:プロジェクト全体総括、コンソーシアム全体管理、ローカル5Gを含むシステムの設計・導入、評価等
夢洲コンテナターミナル株式会社:実証フィールド提供、実装・自走の検討、評価等
三菱ロジスネクスト株式会社:実証の実施、実証結果を活用した他港湾事業者へのシステム提案、評価等
大阪市:実証フィールド周辺の道路利用等の各種調整、評価等
6.今後の展開
実証を通して得られた知見により、コンテナダメージチェックの遠隔化やRTG等の荷役機器の遠隔操作による労働環境の向上及び周辺道路における交通渋滞の緩和をめざし、全国の港湾事業全体の発展に向けて貢献していきます。