日本アイ・ビー・エム/10万量子ビットへの道筋を作る

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著者:IBMフェロー 兼 IBM Quantum バイス・プレジデント ジェイ・ガンベッタ(Jay Gambetta)

IBM Quantumのビジョンは、量子プロセッサーを世界で最も困難な問題を解決できる規模に拡大することです。

そのために、IBMは、2033年までに10万量子ビット・システムを実現するという重要なマイルストーンに狙いを定めています。そして現在、東京大学やシカゴ大学と連携して、現在の最先端のスーパーコンピューターでも解決できないような、いくつかの最も差し迫った問題に対処できるシステム開発に取り組んでいます。

しかし、なぜ10万量子ビットなのでしょうか?昨年のIBM Quantum Summitで、私たちは量子プロセッサーを数千量子ビットにスケールアップするロードマップを示しましたが、それ以上の道筋はあまり明確ではありませんでした。

その理由は、フットプリント、コスト、チップの歩留まり、エネルギー、サプライチェーンなど、さまざまな課題が重なっているためです。これらの課題を解決するためには、物理学、工学、コンピューター・サイエンスにまたがる基礎研究を共同で行う必要があります。
現在のコンピューティングの時代を担っているのが一つの企業ではないように、今、世界の優れた研究機関が一丸となって、新しい時代を迎えるためにこの問題に取り組んでいます。より広範な量子産業の協業が必要とされています。

量子コンピューターを拡張
昨年、私たちは、量子コンピューターを有用なタスクを実行できるレベルまで拡張する計画について、その答えを発表しました。その土台の上で、10万量子ビットのスーパーコンピューターを実現するために、さらなる進化が必要な4つの主要分野が見えてきました: 量子通信、量子ミドルウェア、量子アルゴリズムとエラー訂正(複数の量子プロセッサーと量子通信を使用可能)、そして必要なサプライチェーンが確保された部品です。

東京大学とシカゴ大学の両方で、この4つの分野それぞれを進めるための研究を後援していきます。
東京大学は、量子アルゴリズムの特定から規模の拡大、エンドツーエンドでの実証を主導していく予定です。また、極低温技術や制御電子機器など、このような大規模なシステムに必要な新しいコンポーネントの開発とサプライチェーンの構築も開始する予定です。東京大学は、量子イノベーション・イニシアティブ・コンソーシアム(QIIC)を主宰し、学術界、政府、産業界を結集して量子コンピューティング技術の開発とその周辺のエコシステムの構築に取り組んでいます。

東京大学はまた、IBM-UTokyoラボを通じて、量子コンピューターに関連するアルゴリズムやアプリケーションの研究開発をすでに開始しており、この規模のコンピューターを実現するために必要なハードウェアやサプライチェーンの基礎固めも行っています。

一方、シカゴ大学は、古典と量子の並列化と量子ネットワークにより、量子通信を量子計算に持ち込む取り組みを主導する予定です。また、サーバーレス量子計算実行、回路ニッティング、物理情報に基づくエラー耐性を追加して、量子のためのミドルウェアを改善する取り組みも主導し、これらのシステム全体でプログラムを実行できるようにします。

シカゴ大学は、すでにChicago Quantum Exchangeを通じて、量子と量子通信の分野でリーダーシップを発揮してきた実績があります。CQEは、長距離量子通信を研究するために、124マイルの量子ネットワーク( https://news.uchicago.edu/story/chicago-quantum-network-argonne-pritzker-molecular-engineering-toshiba )を運用しています。さらに、シカゴ大学のソフトウェア技術の多くは、量子ソフトウェアに構造を提供するのに役立ち、IBMをはじめとする業界のミドルウェアに影響を与えました。

私たちは、10万量子ビットのシステムを構築することがいかに困難であるかを認識しています。しかし、私たちの目の前には、既知のリストと既知の未知のリストがあり、道は見えています。そして、もし予期せぬチャレンジが起きたとしても、私たちは産業界としてそれに積極的に取り組むべきです。シカゴ大学や東京大学と一緒に、2033年までに10万量子ビットの接続を実現することは、達成可能な目標だと考えています。

IBMでは、量子を中心としたスーパーコンピューティングを実現するための開発ロードマップを継続するとともに、コミュニティーが漸進的な性能向上を追求できるようにします。これは、量子コンピューターが、古典コンピューターと量子コンピューターが1つの計算ユニットとして動作する、より広範なハイパフォーマンス・コンピューティング・パラダイムの一つとして、古典的なプロセッサーに対するQuantum Advantagesを見出すことです。そして、この全体的なアプローチと、10万量子ビットの達成に向けた取り組みによって、私たちは共に、有用な量子コンピューティングを世に送り出すことを目指しています。

 

 

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