鉄道業界全体における汎用性の高いソリューションの構築に向けて
近年、日本の鉄道業界では、熟練技術者を含む業界従事者の減少が懸念されており、作業現場における自動化や省力化、安全性向上が求められています。そのために必要なインフラとして、高速大容量で超低遅延かつ多数同時接続という特長を持ち、独立したネットワーク網を構築できるローカル5Gの活用が期待されています。
本実証実験では、電車の前方に設置した高精細カメラで撮影した映像をローカル5G でAI解析用サーバに伝送し、線路設備などの異常を解析することで、これまで係員が毎日現地に出向いて1日数時間かけ路線全体を目視で確認していた巡視業務を、AIが解析した異常該当箇所のみを現地確認し、1日数十分で行える仕組みの構築を目指し、業務の効率化・高度化を図ります。
2023年度は複数の鉄道事業者との共同実証実験により、「都市環境」のみならず、「地下環境」、「地方環境」におけるさまざまな路線環境データを集積し、AIによる異常解析の精度を向上させることで、将来的には鉄道業界全体において使用可能な汎用性の高いソリューションの構築を目指します。
今年度は、1日数往復する営業運転下でのさらなるAI解析の精度向上(1回の走行で約90%以上の異常検知率、且つ1日複数回の走行で100%の異常検知率)を図り、2024年度の東横線内での実装を目指します。
2社は、安全性の維持や向上と業務の効率化を実現する新たなデジタルソリューションを創出し、鉄道業界のさまざまな課題解決に貢献していきます。さらにこれらの鉄道業界の事例を応用し、道路・空港(滑走路)での活用など、業界の垣根を超えた共創の輪を広げ、各産業の課題解決やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していきます。
(注)
西鉄、伊豆急は、高精細カメラで撮影した映像のAIによる異常解析を行う形式で実証予定。
<参考資料>
■本実証実験の体制図
■本実証実験の概要図
■映像撮影区間
・東急電鉄 東横線 渋谷駅~横浜駅(約24.2km)
・横浜高速鉄道 みなとみらい線 横浜駅~元町・中華街駅(約4.1km)
・名古屋市交通局 東山線 高畑駅~藤が丘駅(約20.6km)、鶴舞線 上小田井駅~赤池駅(約20.4km)
・JR九州 鹿児島本線 博多駅~福間駅(約21.6km)
・西鉄 天神大牟田線 柳川駅~大牟田駅(約16.4km)
・伊豆急 伊豆高原駅~伊豆稲取駅(約14.7km)
■ローカル5Gとは
ローカル5Gは、自治体や企業などが主体となり、限られたエリアで柔軟に5G網を構築できる無線通信システムです。エリアごとにローカル5G網を構築することで、高速大容量で超低遅延かつ多数同時接続という特長に加え、外部環境に依存しない安定したネットワークを保有できます。
■各社の5G関連の取り組みについて
・住友商事
住友商事は、中期経営計画「SHIFT 2023」において、DXによるビジネス変革を通じた事業ポートフォリオのシフトに注力しています。5GはDX推進における重要技術かつ社会全般にインパクトをもたらす重要なプラットフォームと位置づけ、さまざまな社会課題の解決に向けて「基地局シェアリング事業」および「ローカル5G事業」を中心に取り組んでいます。
・東急電鉄
東急電鉄は、東急株式会社が住友商事とともに2021年2月に設立した携帯通信事業者向けに5Gを中心とした基地局シェアリングサービスを提供するSharing Design株式会社を通じて、駅や商業施設への基地局の設置を行っています。
■「令和5年度 地域デジタル基盤活用推進事業(実証事業)」の結果について
URL:https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000356.html