これまで、地下に埋設された通信設備の設備位置を特定する方法としてはOTDR測定器※3により光ファイバケーブル長を測定したのち、マンホールの坑内に立ち入り目視により現認する方法をとっていました。通信ネットワークで利用されているような比較的距離が長い設備環境においては、測定点からマンホールまでの正確な位置把握が困難であることに加え、マンホールの坑内に立ち入るためには、入口周辺の安全確保、マンホール内換気による作業者の安全確保等の必要があるなど、作業に時間を要していました。
※3 Optical Time Domain Reflectometer:光時間領域反射率計(一般的には光パルス試験器)
2.技術の特徴
DASはC-OTDR ※4光測定方式により、既存の光ファイバ心線に対して意図的に加えられた振動を測定することを可能としています。地中に埋設されている光ファイバケーブルに直接触れることなく、地上からマンホールの鉄蓋に打撃振動を加えることで発生する光ファイバ心線の超微振動を検知し、振動点までの距離を測定することができます。
※4 Coherent detection – Optical Time Domain Reflectometer:コヒーレント検波方式を用いたOTDR
▼【マンホール鉄蓋打撃による位置特定技術】
3.本技術の運用イメージ
これまでは故障が発生した場合、測定点から故障点までの光ファイバケーブル長に基づいて故障点を探索していましたが、測定点からマンホール等までの正確な位置把握が困難であるため、複数のマンホールに入坑して確認する作業が発生し、手間がかかっていました。本技術を用いることにより、現地でマンホールに入坑する前に鉄蓋をゴムハンマー等で打撃することによって、測定点から打撃したマンホールまでの距離を正確に測定できるため、複数のマンホールへ入坑することなく故障点の設備位置の特定が可能となり、作業の効率化が実現できます。
▼「打撃による振動検知イメージ」
▼「従来の故障位置特定作業との比較」
4.今後の展望
本技術と運用から得られたノウハウは、通信設備保守業務の効率化という本事例に留まらず、弊社が所有する約60万km(地球約15周分)の光ファイバケーブルをセンサとして活用した光ファイバ環境モニタリング実現に寄与する ことが期待できます。
今後は、測定技術の更なる高度化による位置特定精度の向上、機械学習等を活用したデータ分析・解釈の検討などにも取り組みます。NTTグループの目指すIOWN時代においては、光ファイバ環境モニタリング運用を実現し、災害対策やインフラ設備の監視など、様々な地域社会の課題解決に貢献することを目指します。